著者は1901年生まれの物理が専門の科学者。1997年、95歳で逝去。死ぬまで元気で天寿を全うされました。
わたしは2001年の改訂版を読みましたが、2009年に文庫版が発売されており、長く読まれている本です。
分子生物学と分子化学
三石氏は60歳のときに白内障になり、医者から失明を宣告されたそうです。1961年のことなので、当時の医学では白内障は治せなかったんですね。ところが著者は懸命に人体のしくみを勉強し、栄養に着目したんですね。
文献によると、白内障はビタミンC不足によるものらしい。そこで著者はビタミンCを自ら注射し、白内障の完治に成功したんです。
似た話があります。
工学博士の後藤日出夫氏です。彼はアメリカ滞在の2年間で約30kg太り、BMI27.5になり、糖尿・高脂血症・脂肪肝・高コレステロール血症・高血圧・花粉症・アレルギー性鼻炎・胃炎・十二指腸潰瘍・睡眠時無呼吸症候群・不整脈・逆流性食道炎などの生活習慣病を発症し、長い薬漬けの生活を余儀なくされました。
後藤氏は米国最新医療をもとに、それぞれの病気の発症原因とメカニズム、治療方法を分子レベルの化学反応として捉えた調査研究を重ね、独自の疾病体質改善食事療法を実践し、数十年に及ぶ生活習慣病すべてを克服しました。
三石氏は分子生物学、後藤氏は分子化学だそうです。学者おそるべし。勉強はほんとに身を助けるんですね……。
三石氏と後藤氏の違い
両者は食事療法で基本的には同じようなことを述べています。でも、実践の仕方は少々異なってます。
ざっくり言うと、三石氏は調整型で後藤氏は予防型。
たとえば三石氏は高血圧でも塩分は気にしなくてもいいと言います。食塩によって摂取されるナトリウムの2倍カリウムをとっていれば問題ないからです。また、三石氏は糖尿病であるにも関わらず砂糖を食べ、血糖値が上がっても気にしません。糖尿病は血糖値が上がることがコワいのではなく、合併症になることがコワい。だから血糖値が下がらなくても、活性酸素が悪さをしないように対策することに力を入れます。つまり、抗酸化物質をとればだいじょうぶというわけです。
三石氏は基本的には好きなものを食べてから栄養バランスを調整する感じです。
一方、後藤氏のほうは時代も新しいので、むやみに活性酸素を増やさない食事を推奨しています。両者共通してダメと指摘しているのは唯一トランス脂肪酸です。
理屈がわかると健康管理の意欲が向上します
両者とも自らのからだで立証しているところに説得力があります。
ですが、必要な栄養量にはものすごい個人差があるようで、水溶性のビタミンCなどは、人によって100倍ぐらい差があるとか。要するに、自分のカラダは自分でようすを見ながら管理するのが一番なんですね。
それにしても、この著書、当時は斬新過ぎて、おそらく本気で取り上げる人が少なかったのではないでしょうか。ビタミンのメガ投与の効用については、医学者以外の科学者がずいぶん前に論文を発表していたにも関わらず、医学界が長く抹殺していたことが最近になって話題になってます。
三石氏のこの著書もお医者さんに読んでもらいたいものです。
分子生物学に栄養学、むずかしいことはわからなくても、からだのしくみや理屈がわかるとおもしろいものです。